「正社員になれなきゃダメですか?」
そんな問いかけを、最近SNSでよく目にします。
特に20代の若者たちの間で、従来の「新卒→正社員」という王道ルートから外れた働き方を選ぶ人が増えているんです。
その中でも「派遣」という働き方を選ぶ若者たちの声に、私はずっと耳を傾けてきました。
彼らは単に「正社員になれなかった」から派遣を選んだわけではありません。
むしろ「今の自分に合った働き方」として、積極的に選んでいるケースも少なくないのです。
でも同時に、その選択には「自由」と「不安」が常に隣り合わせにあります。
今回は、そんな20代派遣スタッフたちの本音に迫りながら、これからの働き方について考えてみたいと思います。
目次
派遣という選択肢:Z世代のホンネ
派遣という働き方について、Z世代(1995年以降生まれ)を中心とした若者たちの本音を探ってみました。
SNSやインタビューから集めた声からは、私たちの親世代とは明らかに異なる「働く」に対する価値観が見えてきます。
「正社員」だけがゴールじゃない
「正社員至上主義からの卒業」とでも言うべき考え方が、若い世代を中心に広がっています。
「親は心配するけど、私は別に今すぐ正社員になりたいと思ってない。今は自分の時間も大切にしたいから」(25歳・事務派遣)
ワークライフバランスを重視する傾向は、Z世代の特徴として顕著です。
正社員の長時間労働や転勤の可能性を考えると、あえて派遣を選ぶという判断も理解できます。
ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方
派遣という働き方の魅力は、なんといっても「自分のペースで働ける」という点です。
「3ヶ月だけ集中して働いて、その後1ヶ月休む」といったフレキシブルな働き方ができる点を評価する声も多く聞かれました。
また、副業や学業と両立させやすい点も、若者たちにとって大きなメリットになっています。
- 短期集中型で働ける
- シフト制で予定が立てやすい
- 残業が基本的に少ない
- 契約期間が終われば休暇も取りやすい
本音トーク:自由を得た代わりに感じる”モヤモヤ”
一方で、自由な働き方の裏側には「モヤモヤ」も存在します。
「将来が見えづらい」という不安は、多くの派遣スタッフが抱える悩みです。
「同級生が正社員としてキャリアを積んでいく中で、自分だけ取り残されている気がする」という声も少なくありません。
親や親戚からの「いつまで派遣なの?」という問いかけに、どう答えるべきか悩む人も多いようです。
SNSで拾った声:「不安定だけど、意外と満足」
Xやnoteなどで若い派遣スタッフの声を集めると、意外にも「満足している」という前向きな意見も多く見られました。
「確かに不安定だけど、嫌な職場をすぐに離れられるのは大きな武器。心の健康を守るために、この働き方を選んでいる」(27歳・IT派遣)
自分の心身の健康を優先できる点は、現代の若者にとって重要な価値観になっているようです。
どうして派遣を選んだの?若者たちの背景
実際に派遣という働き方を選んだ若者たちには、それぞれの背景があります。
彼らの選択には、個人的な事情だけでなく、社会背景も大きく影響しています。
ここでは、いくつかの具体的な事例を通して、その理由を掘り下げてみましょう。
新卒で正社員にならなかった理由
Aさん(26歳・女性)のケース:
「大学時代に留学経験があり、そこで出会った外国人の彼氏と将来海外で暮らすかもしれないと考えていました。正社員になって数年で退職するくらいなら、最初から派遣で働いた方が罪悪感も少ないと思ったんです」
Bさん(24歳・男性)のケース:
「大学を卒業する頃、自分のやりたいことがはっきり見えていませんでした。とりあえず就職して会社に合わなかったら辞めるよりも、派遣で様々な職場を経験してから決めたいと思ったんです」
コロナ禍がもたらした”働くこと”の再定義
2020年の新型コロナウイルス流行は、多くの若者の就職観や働き方に大きな影響を与えました。
「就職活動中にコロナで内定が取り消されました。その後、派遣として働き始めましたが、リモートワークも可能な職場で柔軟に働けることが意外と合っていると感じています」(25歳・営業アシスタント)
「コロナをきっかけに、『人生は予測不可能』と実感しました。だからこそ、長期的な安定より今を大切にしたいと思い、派遣を選びました」
「やりたいことを見つけたい」時間のための選択
多くの若者にとって、派遣は「自分探しの時間」を確保するための手段でもあります。
「平日は派遣で働きながら、週末は自分の好きな音楽活動に打ち込んでいます。いつか音楽だけで食べていけるようになりたいですが、それまでの”つなぎ”として派遣は理想的です」(23歳・男性)
「フリーランスになりたいけど、いきなりは不安でした。派遣として働きながらスキルを磨いて、段階的に移行していく計画です」(28歳・Webデザイン派遣)
家族や周囲の視線とどう向き合っているか
「最初は両親に猛反対されました。でも、実際に働き始めて、自分で家賃や生活費を払えるようになると、少しずつ理解してもらえるようになりました」(24歳・女性)
「友人からは『いつか正社員になるの?』とよく聞かれます。でも私自身は今の働き方に満足しているので、『今はこれが自分に合っている』と答えるようにしています」
若者たちは、周囲からの圧力や偏見に苦しむ場面もありますが、自分の選択を肯定的に捉え直す力も持ち合わせているようです。
自由の裏側にある”見えない不安”
派遣という働き方には自由がある一方で、若者たちが抱える不安も少なくありません。
数字で見ると、その実態はより明確になります。
厚生労働省の調査によれば、派遣労働者の平均年収は正社員の約7割程度。
将来設計を考える上で、こうした経済的な格差は無視できない問題です。
契約更新、収入不安、キャリアの見通し
派遣スタッフにとって最大の不安要素は「契約更新」です。
多くの場合、契約は3ヶ月や6ヶ月単位で更新が必要となります。
「更新月が近づくと、どうしても不安になる。今の職場は気に入っているけど、『もう更新しません』と言われたらすぐに次を探さなければならない」(26歳・事務派遣)
また、キャリアの見通しについても悩みを抱える人は多いです。
以下の3つの不安が特に顕著でした:
1. スキルアップの機会
- 専門的なスキルを身につける機会が限られる
- 研修制度が充実していない場合が多い
- 責任ある業務を任されにくい
2. 収入の天井
- 経験を積んでも大幅な昇給が期待できない
- ボーナスがないか少額の場合が多い
- 老後の資金計画が立てづらい
3. キャリアパスの不透明さ
- 長期的なキャリア形成のモデルが少ない
- スキルの証明や評価を得にくい
- 年齢を重ねるにつれて不安が大きくなる
「いつまで続けられるか」の葛藤
年齢を重ねるにつれて、「いつまで派遣として働けるのか」という不安は大きくなっていきます。
「20代のうちは『まだ若いから』と言い訳できるけど、30代、40代になったときのことを考えると不安になる」(27歳・女性)
「周りの派遣スタッフを見ていると、40代以上になると仕事が減っていくような気がする。年齢による差別はないはずなのに、実態としては厳しい」(25歳・男性)
社会保障や福利厚生のリアル
派遣スタッフの社会保障や福利厚生は、正社員と比べると見劣りする部分が少なくありません。
実態として多いケース:
- 社会保険は加入できるが、厚生年金の掛け金が低くなりがち
- 有給休暇は法律上付与されるが、取得しづらい雰囲気がある
- 住宅ローンの審査で不利になることがある
- 病気やケガで長期休暇が必要になった場合のセーフティネットが弱い
「将来の年金がどれくらいもらえるのか不安。iDeCo(個人型確定拠出年金)を始めましたが、それだけで十分なのかわからない」(28歳・女性)
孤独や疎外感との向き合い方
多くの派遣スタッフが感じるのは「職場での孤独感」です。
「同じ仕事をしていても、『派遣さん』と呼ばれる瞬間に疎外感を感じる」(26歳・男性)
「飲み会やイベントに誘われないことも多い。正社員の人たちとの間に見えない壁を感じる」(24歳・女性)
こうした孤独感を克服するために、派遣スタッフ同士のコミュニティやSNSでのつながりを大切にしている人も増えています。
また、意識の高い派遣会社では、派遣スタッフ同士の交流会を定期的に開催するなどの取り組みも始まっています。
それでも前を向く理由:希望の声
ここまで派遣という働き方の不安や悩みに焦点を当ててきましたが、多くの若者たちは前向きに自分の道を切り開いています。
彼らはどのようにして希望を見出しているのでしょうか?
実際の声から、具体的なヒントを探ってみましょう。
「自分の軸」で働ける喜び
派遣という働き方を前向きに捉えている若者たちに共通するのは、「自分の軸」をしっかり持っているという点です。
自分らしく働くためのステップとして、以下のような考え方が参考になります:
1. 自分の価値観を明確にする
自分にとって「働く目的」は何かを考えてみましょう。
お金?自己成長?社会貢献?生きがい?
「私は『生活のための仕事』と『やりがいのための活動』を分けることで、精神的な余裕を持てるようになりました」(27歳・事務派遣)
2. 短期・中期・長期のゴールを設定する
3ヶ月後、1年後、5年後に実現したいことを書き出してみましょう。
「正社員か派遣かという働き方より、自分が何を実現したいかを優先しています。その手段として今は派遣が合っているだけ」(25歳・IT派遣)
3. 定期的な自己評価の時間を持つ
月に一度は自分の状況や気持ちを振り返る時間を作りましょう。
スキルアップや転職へのステップとして
派遣を「ただの仕事」ではなく「キャリア形成の一部」と捉えることで、多くの若者が前向きに取り組んでいます。
効果的なスキルアップの方法として:
1. 派遣先での経験を最大限に活かす
- 新しい業務に積極的に挑戦する
- 正社員の仕事を観察し学ぶ
- 職場の研修やセミナーに参加する
2. 外部でのスキルアップを並行して行う
- オンライン講座や資格取得を計画的に進める
- 休日を利用して勉強会やイベントに参加する
- 複数の派遣先で経験を積み、多様なスキルを身につける
「派遣として働きながら、週末は別の分野のスキルを磨いています。将来的には両方のスキルを活かせる仕事に就きたい」(26歳・男性)
“自分らしさ”を大切にした生き方の模索
多くの20代派遣スタッフが「自分らしい生き方」を模索する中で、いくつかの共通パターンが見えてきました。
成功例からのヒント:
- 複数の収入源を持つ
派遣の仕事をベースにしながらも、副業やフリーランスの仕事を少しずつ増やしていく - 専門性を磨く
特定の分野で高いスキルを身につけ、「その道のプロ」として認められることを目指す - デジタルノマドとしての働き方
リモートワーク可能な派遣の仕事を選び、場所にとらわれない生活スタイルを実現する - 起業準備としての派遣
将来の起業に向けて、派遣として様々な業界や会社の仕組みを学ぶ
「派遣という働き方を選んだからこそ、自分の時間を確保できて、本当にやりたいことに挑戦できています」(28歳・女性)
仲間とのつながりが支えになる
孤独感を乗り越えるために、多くの若者が「派遣仲間」とのつながりを大切にしています。
「派遣同士のLINEグループで情報交換しています。同じ悩みを持つ人たちとの会話が何よりの支えになります」(25歳・女性)
「SNSで派遣仲間と知り合い、オフ会で実際に会うようになりました。その縁でお互いに良い案件を紹介し合うこともあります」(27歳・男性)
このように、派遣という働き方を前向きに捉え、自分らしく生きるためのヒントは、同じ道を歩む仲間たちの中にも見つかるようです。
派遣スタッフの声を社会につなげるには
派遣という働き方を選んだ若者たちの声を社会に届け、より良い環境を作っていくためには何が必要でしょうか。
現状と理想のギャップを比較しながら考えてみましょう。
メディアが描く派遣像と現実のギャップ
メディアでの描かれ方 | 実際の派遣スタッフの姿 |
---|---|
「やむを得ず」派遣を選んだ人 | 積極的に選択している若者も多い |
低賃金で搾取されている | 時給は決して低くなく、残業も少ない |
スキルアップの機会がない | 様々な職場経験を通じてスキルを磨いている |
将来に不安を抱えている | 不安と自由のバランスを取りながら生きている |
社会的に弱い立場 | 自分の権利や価値を理解し主張できる |
「メディアは派遣の負の側面だけを強調しがち。でも、実際にはポジティブな面もたくさんあるんです」(27歳・女性)
「『派遣=かわいそう』というイメージが変わってほしい。自分の選択に誇りを持っています」(25歳・男性)
派遣会社のサポート体制はどうあるべきか
現状の派遣会社のサポートと、若者たちが求める理想的なサポートには大きな差があります。
現状のサポート(多くの場合):
- 契約事務の処理
- 基本的な労務管理
- トラブル時の最低限の対応
理想のサポート体制:
- キャリアコンサルティングの充実
- スキルアップ研修の提供
- メンタルヘルスサポート
- 派遣スタッフ同士の交流促進
- 正社員転換支援(希望者向け)
- ライフプランニングのアドバイス
「派遣会社によってサポートの質が全然違います。良い派遣会社と出会えるかどうかで、派遣としての経験は大きく変わると思います」(26歳・女性)
実際、シグマスタッフが提供している派遣求人サービスは、医療・介護分野に強みを持ち、キャリアサポートが充実していると評判です。
各拠点によって求人の特色も異なるため、自分に合った職場を見つけやすいという特徴があります。
“選べる働き方”を支える社会インフラとは
派遣という働き方を含め、多様な働き方を支える社会インフラにも課題があります。
現在の日本では、依然として「正社員前提」の制度設計が多く、派遣や非正規雇用を選択した場合に不利になることが少なくありません。
現状の課題:
- 住宅ローンの審査で不利になりがち
- 年金制度が長期雇用を前提としている
- 福利厚生の格差が大きい
- 社会的信用が得にくい
理想の姿:
- 雇用形態に関わらない社会保障制度
- 多様な働き方を前提とした住宅・金融サービス
- 個人のスキルや実績を評価する文化
- 「正社員以外=不安定」というイメージからの脱却
「雇用形態ではなく、個人の能力や実績で評価される社会になってほしい」(27歳・IT派遣)
「派遣だからといって、将来設計ができないわけではない。ただ、今の社会制度がそれを前提としていないのが問題」(28歳・男性)
まとめ
20代の派遣スタッフたちの声を通して見えてきたのは、「派遣=不安定」という単純な図式では語れない、複雑で多様な現実です。
若者たちは「自由」と「不安」のはざまで、自分なりのバランスを見つけながら前向きに生きています。
彼らにとって派遣という働き方は、必ずしも「仕方なく」選んだものではなく、自分のライフスタイルやキャリアビジョンに合わせた「積極的な選択」であることも多いのです。
もちろん課題も少なくありません。
安定した将来設計が難しかったり、社会的な偏見に直面したりすることも現実です。
しかし、多くの若者たちは自分の選択に誇りを持ち、流動性を味方につけながら、前向きに生きる道を模索しています。
これからの社会に必要なのは、「正社員」か「非正規」かという二項対立ではなく、多様な働き方を認め、それぞれが自分らしく生きられる環境づくりなのではないでしょうか。
派遣という働き方が「仕方なく」ではなく、真の意味で「選択肢の一つ」となる社会。
それこそが、私たちが目指すべき未来の形なのかもしれません。